第4章 夕虹
******
新学期になり数日がすぎる。
口元の傷は、風邪気味だからといって、癒えるまでマスクで隠した。
家族には、疲れてデキモノができたみたいだ、と嘘をついた。
親は、ひどくなったら病院にいきなさいよ、と案外とスルーだったが、兄貴だけは、何か言いたげな顔をしていた。
だけど、ほんとのことなんて言えるわけもないから、俺はあえて黙ってた。
酷いめにはあったけれど、あれから、なんとなく大野さんとの距離がまた少し縮まった気がする。
秘密を共有しているせいだろうか。
大野さんはあいかわらず週末はアルバイトに行っているみたいだ。
事件のときに俺をみつけてくれたリョウスケさんは、とても心配してくれているみたいで、
『しばらく松本くんは店に来たらダメ』
って、言ってるらしい。
まぁ……言われなくても、しばらくは行くつもりはない。
大野さんには学校で会えるし。
なんなら家にも行けるし。
長野さんたちに会えないのは少し残念だけど、バイト先まで押しかける理由はないから。