第4章 夕虹
焼き鳥屋をでると、朝から降り続いていた雨は、やんでいた。
「ラッキー」
兄貴が嬉しそうに空を見上げて、目を細めた。
俺も一緒に空を見上げる。
立ち並ぶビルの隙間に、地上からの光で薄明るい黒い空が広がってる。
だが、まとわりつくような湿気と、雨上がりのアスファルトの匂い、さらに、飲食店のエアコンの室外機からする匂いが三位一体で混じりあい、不快指数100パーセントだ。
「あっつ……」
もう、額に吹き出してきた汗を、腕でぬぐった。
「帰るか?」
兄貴が時計に目を落とす。
俺もスマホをとりだして確認すると、時刻は『まだまだ遊べるぜ』と言ってるような時間帯だった。
兄貴と出るのが久しぶりだったから、俺は帰りなくなくて、繁華街を見渡した。
「ボーリング行こうよ」
「……却下だな」
「カラオケは?」
「却下」
「ゲーセン」
「……まぁいいぞ」
「……基準なんなの」
「気分」
「……ああそう(笑)」
金曜日の夜とあって、若者やサラリーマンでにぎわっている通りを二人で歩く。
ゲームセンターがいくつか、軒をつらねてる箇所をみつけ、どこに入ろうか物色を始めたとき、視界の端を横切った人物に、何かがひっかかった。
「……?」
振り向く。
すると、今朝、言葉を交わしもう一度会いたいと願っていた人が、てくてくと歩いているのを見た。