第4章 夕虹
クーラーの効いた快適な部屋から、一歩でると、夏の朝の爽やかな空気にまじり、コーヒーのよい香りが漂ってくる。
リビングにそっと顔をだすと、スツールで新聞を読んでいた雅紀さんが顔をあげた。
「あ、おはよう。松本くん」
「……おはようございます」
「よく眠れた?」
「……少し」
「そっか……」
炭酸水でも飲む?とグラスを手にしてくれるから、俺はいただきます、と頭をさげた。
亡くなった恋人と夜通し飲むと言っていた雅紀さんは、爽やかで元気な笑顔だ。
深夜に車をだしてくださって、寝室を貸してくださって……俺、ほんとに迷惑をかけたのに。
大野さんが全面的に信頼してる人……分かる気がする。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます……」
冷えた炭酸水が、なみなみと注がれたグラスを渡された。
キンキンに冷たいそれは、ぼんやりした頭を覚醒させてくれる。
コクコク飲む俺を、雅紀さんは優しい目で見つめてくれていた。
……おいし
「……そういえばさ、昨日わかったんだけど、松本くんのお兄さんってさ、俺の友達だったよ」
「……そうみたいですね。昨日大野さんから聞いて……俺もびっくりしてます」
「ね。すごい偶然」
雅紀さんは、にこにこと笑う。
俺も兄貴の交遊関係を、全部知ってる訳じゃない。
親しい人は風磨さんっていうことくらいだ。
だから雅紀さんの存在は全く知らなかった。
……兄貴とどんな関係性だったんだろう。
「……仲良かったんですか?」
「……うん、まあね。普通の先輩後輩だったよ。俺が卒業してからは、全然疎遠になってたけど」
雅紀さんは懐かしい目をした。