第4章 夕虹
既に終電をすぎた時間。
道行く人々も、かなり減り、通りの見通しもよい。
KINGの青いネオンの前を通りすぎ、一区画ほど走ったあたりで走るスピードを落とす。
ほどなくして、松本が呟いた店の看板をみつけ、そのあたりに目を走らせると、閉店した飲食店のシャッターの横に、座り込んでる彼をみつけた。
うつむいて、ぴくりともしない。
片手にはスマホを握りしめてる。
俺は、はぁはぁと、弾む息を整えながら、静かに歩み寄った。
「……松本」
そっと呼びかけると、松本は弾かれたように顔をあげた。
その目は泣いたあとのように赤く、心細げに濡れていた。
「……おまたせ」
「大野さん……」
「……どうしたの、…なにかあった?」
「……」
松本は、くっと口を引き締めた。
その口元は唇の端が切れていて、赤い。
俺は、その様子をみて、何かされたのは間違いないと悟った。
「……しんどそうだね。とりあえず帰ろうか……」
手を差し出すと、松本は素直に手を出した。
その手は驚くほど冷たくて、震えてる。
立ち上がらせると、ぷんと異臭がして、吐いたものらしきもので、衣服は汚れていて。
俺は、思わず松本を抱き締めた。
誰にやられたんだよ……?!
悔しくて、ぎゅっと強く抱き締めたら、松本は、俺の肩口で、ふうっと安堵のためいきをついたようだった。
そうして、小さく呟いた。
「大野さん……」
「……なに?」
「……会いたかったよ」
俺は、声をあげて泣きそうになった。