第4章 夕虹
思わず、大丈夫?!と、問いかけそうになって、その言葉を咄嗟に飲み込んだ。
いま、彼がどんな状況か分からない。
ほんとに、襲われた当事者なのかも分からない。
リョウスケも、倒されてた人物を、きちんと松本と確認したわけじゃないからだ。
だが、今聞こえた松本の声は、か細くて、力がない。
…きっと、間違いはないだろう。
でも、当事者ならば、具体的に何をされたのか。
ノンケであろう松本は、男に襲われたことが信じられないかもしれない。
……ショックをうけすぎて誰にも会いたくないかもしれない。
デリケートな問題だった。
俺は、唇を噛み懸命に考えた。
やっとで繋がったこの回線を、切るわけにはいかない。
俺は、深呼吸して、そっと問いかけた。
「よかった……やっと声が聞けた」
『あの……』
「電話くれてたでしょ?」
『大野さ……ん』
「今、外?」
『あの……』
「どこにいるの?」
『……わからない』
マジか。
消えそうな声に焦って、俺は、核心をつく。
「……KINGの近く?」
『……めちゃくちゃに走ったから……』
「……そこから、なにがみえる?店とかビルとか……名前わかる?」
松本が呟いた名前は、俺の考えた通り、KINGを通りすぎた先の店。
俺は、わかった。すぐいく、と伝え、回線を繋げたまま、全力で走った。