第4章 夕虹
長野さんと三宅さんにお礼を言って、店を出た。
真夏の繁華街は、夜遅くなっても、活気がある。
キラキラしたネオンや、食べ物屋のいろんな匂いのなか、自分の年齢の後ろめたさも手伝い、少しだけ早足になりながら、俺は駅に向かって歩く。
気持ちは、とても落ち着きを取り戻していた。
大野さんは、男同士に理解がある。
俺の立ち位置は、きっと特別。
たったそれだけの情報量でも、大野さんへの絶望しかなかった想いは、淡い希望にかわり、それと同時に、兄貴への自分の持ち方の方向性もみえてきた気がする。
兄貴に、性的嗜好を理解してもらうことは無理だろう。
だが、兄貴が、大野さんに悪い印象を持ってしまったのは、飲酒してしまった俺の落度。
大野さんの人間性をきちんと説明するのは俺の役目であると思った。
……わかってくれないと泣くのは簡単だ。
だけど、頭のいい兄貴は、俺が真剣に向き合い、大野さんはいい人だとうったえつづければ、きっと分かってくれる、と思った。
俺……伊達に、兄貴に何年も片思いしてないし。
「……よし、決めた」
自分の成すべきことを心に決めた俺は、今から帰ります、とメッセージをおくろうと、スマホをとりだした。
そこで、不在着信があったことを思いだし、何気なくタップする。
表示された名前は。
「……大野さん?」