第4章 夕虹
俺が、落ち着くのを長野さんはじっと待ってくれた。
そして、
「いいことを教えてあげる」
「……?」
長野さんは、俺の前に肘をついて、にこりと笑った。
俺は、おしぼりで、もう一度顔中ゴシゴシふいて、じっと長野さんを見返した。
「あのね。さっきもいったけど。大野ってさ、全然愛想ないの」
「……はい」
「それは、対、お客さんだけじゃなくて、俺たちにもね?」
「……そう……なんですか」
「そうだよ。いつも淡々と仕事をして、静かに帰ってく」
「……はい」
「だからね、君が現れたとき、正直驚いた。君が酔っ払ったときは、すごい剣幕で君のことをたずねてきたし」
「……」
「君が遊びにきたときは、とても嬉しそうに笑ってたし」
「……」
「めったに見れないんだよ。あいつのあんな顔」
……そうなんだ……
大野さんの、ふにゃりとした笑顔を思い出す。
優しくて、温かくて。
じゃあ、懐にいれてくれた人間に対してだけ、そんな姿を見せてくれるということなのか。
俺は……その人間になれてるというの?
「少なくとも、君は大野にとっては、ある意味特別なんだと思う」
長野さんはきっぱりと言い切ってくれた。
それに…これはまあオフレコっちゃオフレコなんだけど………、と長野さんは続ける。
「俺の恋人も……実は男なんだけどさ。大野はそれ知っても、フラットだったよ。別にいいんじゃないですかって」
「…………え?」
「あいつは、男だからとかそういうのこだわらないって、言ってたよ」