第4章 夕虹
帰りのバスの中で、スマホに入ったメッセージに気づき、頬が緩む。
『今日暇か?』
社会人になってる兄貴は、いつも忙しい人だけど、たまに時間があくと、こうして俺と遊んでくれる。
昔はそんなでもなかったけど、兄貴が社会人になったあたりから、兄弟仲が、よくなった気がする。
両親も、そんな俺たちの関係性が嬉しいみたいで、ちょっと帰りが遅くなろうが、あまり目くじらたてて怒ったりしない。
世は金曜日。
今日は、兄貴にたくさんたかってやろう。
俺は、ウキウキしながら、
『焼き鳥食べたいなぁ』
と、打って送信した。
俺の自慢の兄貴である、翔は、容姿端麗、成績優秀、非の打ち所のない人だ。
そんな人を兄にもつと、たいていその下は比べられてひねくれる。
だが、おしいことに、兄貴はスポーツがからっきしだった。
一方、俺は、勉強は嫌いだが、スポーツは一通り器用にこなした。
そして、俺もそこそこモテた。
だからだろう。
お互いにないところが優れていたが故に、周りから比べられることもなく。
俺たちは、特に問題なく健やかに育った。