第4章 夕虹
帰りたくないな……。
子供っぽいぐずぐずとした思いから、もう一杯シンデレラを注文する。
長野さんは、かしこまりました、とにこやかに頷いて、ボトルを何本かピックアップしてゆく。
俺が、その様子をじっと見つめてると、長野さんはちらりと俺を見上げて、少しだけ気遣う表情になった。
「……なんか、あったの?」
「…………え?」
「初めて来てくれた時と比べると、ちょっと元気がないみたいに感じて」
「あ……いえ」
それとも、大野がいないからかな?と、長野さんは微笑み、どうぞ、とグラスを置いてくれた。
俺は、
「……そうかもしれませんね」
呟いて、苦笑する。
長野さんは、懐の深い大人の笑みで、俺の前にかがんだ。
その内緒話のような体勢に、俺は知らず身構える。
長野さんは、ひそやかな俺に聞こえるだけの声音で、
「聞いてもいい?」
と言った。
「?……はい」
「大野とはどんな関係?」
「……はい?」
「松本くんは、恋人なの?」
「…………っ……ちがいます!」
「そうなの……?」
「……はい……」
そうであったら、どんなにか嬉しいだろう。
俺は、長野さんを見上げた。
長野さんの魔法のような優しい笑み。
落ち込んだ精神状態と、少しの酔いもあってか……俺はつられるように、そのまま、ぽろんと本音を吐き出してしまった。
「……俺が好きなんです。一方的に」