第4章 夕虹
「……大野さんってどれくらい前から、ここで働いてるんですか」
気になってたことを尋ねると、長野さんは、考えるようにグラスを磨く手をとめた。
「一年…くらい前だったかな」
「へぇ…」
「綺麗な顔してるのに無愛想でさ。店長が連れてきた子じゃなかったら、即、追い出してたよ」
長野さんは、 そのときのことを思い出すように、クスクス笑った。
無愛想…わかる気がする。
ただでさえも、大野さんって、心を開いた相手じゃないと、素顔はみせないタイプなのに。
つられて俺も、ふふっと笑う。
俺の知らない大野さん…もっと聞きたい。
俺は身を乗り出した。
「…大野さんと…ここの店長は知り合いなんですか?」
すると、長野さんは、首をかしげる。
「……どうだろ。けど、ある日突然、こいつを、鍛えてやってくれって店長が連れてきたんだよ」
「へぇ…」
「綺麗な顔してるのに、ニコリともしないから、接客業なんて、向いてないな、この子、って思ってたのに、今やうちの涼介と、一、二を争う人気者になっちゃって」
…涼介?
誰だろ?と、いう顔をしてると、長野さんは顎で、俺の後ろを指した。
振り返ると、そこには、さっき俺に声をかけてくれた、ピアスをつけたお兄さんが、テーブルを拭いてる。
「…なるほど」
納得というように頷いたら、長野さんは、空になった俺のグラスを下げながら、
「おかわり、なんか作ろうか?」
と、きいてきた。