第4章 夕虹
とっさのこととはいえ、ちゃんと財布も持ってでてきて良かった、と自分で自分を褒めながら、電車を乗り継ぎ、繁華街にでる。
夏の宵の口。
飲み食いの始まる前のなんだかざわざわとした浮き足だった空気は、高校生である俺には、やはり居心地は悪い。
早足で、そこを駆け抜け、静かな通りにでる。
青いネオンのKINGの文字を見ると、少しホッとした。
黒い重厚な扉を開くと、記憶に新しい静かなBGMが出迎えてくれて。
そっと中に足を踏み入れると、真夏の暑い重たい空気から、冷房のきいた涼やかな空気にかわり、じわりと汗をかいてる体に気持ちいい。
綺麗な顔立ちの小柄な人が、俺に気づき、すかさず寄ってきててくれた。
この間とは違う人だ。
キラリと光るビアスがとても似合ってる。
その人は、花が咲くように微笑んだ。
女の子みたいな人だと思った。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか」
「……はい」
「ではこちらへどうぞ」
優雅な仕草でカウンターへ誘導された。
オープン直後のせいか、俺の他にはカウンターに人はいない。
勧められるままにど真ん中に座ると、三宅さんが気がついて、
「いらっしゃい」
と、笑ってくれた。
そこで俺は、ようやく笑顔をつくることができた。
「……こんばんは」