第4章 夕虹
俺の、何か言いたげな視線を感じ取ってくれたのか。
ケーキ屋を出てしばらくしてから、雅紀さんは、
「…気になるよね」
と、微笑みながら、前方の赤信号にゆっくりとブレーキをかけた。
俺は、膝の上のケーキの箱を見つめながら、小さくうん…と、頷いた。
少しばかり、冷たい雰囲気のある松本のお兄さんが、雅紀さんと知り合いだったというだけで驚きなのに、なんとなく…そう、なんとなく再会を喜んでるわりには、二人の間に温度差があるような気がしてならなかった。
それは、あっさりと店を出ていったお兄さんの背中と、それを見送る雅紀さんの横顔に表れていたように思う。
俺にだけ、向けられた敵意とは、また別の何か。
雅紀さんは、フロントガラスの向こうをみつめたまま、思い出すように、ぽつりと語った。
「翔ちゃんはね…大学の後輩」
「……」
「好きだったんだ。俺が。…一方的にね」
もちろん、昌宏さんと出会う、うんと前だよ、と、雅紀さんは、俺のために優しくつけ加えた。
「でも、翔ちゃんはノンケだったから。想いは言わなかった。拒否されて顔を会わせられなくなるほうが嫌だったから」
「……」
俺は、ひかれるように雅紀さんの横顔をみつめた。
雅紀さんは、目尻に優しいシワをよせて、ふわりと笑い、アクセルをゆっくり踏んだ。
「俺は、今の智と似たことをしてた」