第4章 夕虹
店の外まで、甘い香りが漂ってくる。
扉をそっと開けたら、カラランという鈴の音とともに、いらっしゃいませー、という爽やかな声に迎えられた。
俺は、雅紀さんの背中にくっついて、後ろからそっとついて入る。
大きなショーケースに、宝石のようにキラキラしたケーキが、たくさん並んでる。
だが、なんにしよっかなー、と呟きながら歩いてゆく雅紀さんの後ろを…俺はついていきそびれた。
何故ならば、ショーケースを挟んで、パティシエと話をしている後ろ姿の青年に目を奪われたからだ。
「そっか。弟君、今日誕生日か。いくつになった?」
「16。もう高一」
「…早いなぁ、俺らのあとを泣きながらついてきてたのにな」
「な。可愛かったのに…」
「あれ。どした?」
「……ちょっと喧嘩をしてな。ここのケーキで機嫌が直ればいいんだけど」
「喧嘩?珍しい」
「…兄弟だし。喧嘩くらいするわ」
「ははっ。弟くんにおめでとうって言っといて」
「サンキュ」
言って、ケーキの箱を手に、笑顔でこちらを振り返ったのは、まぎれもなく…
「……」
松本のお兄さん。
バッチリと目があってしまい、うわ…と、思った瞬間、
「翔ちゃん??」
「雅紀?!」
雅紀さんとお兄さんの、まるで知り合いかのような反応に、今度こそびっくりして俺は息をのんだ。