第4章 夕虹
「そうだ。ケーキも買って帰ろうか」
「ほんと?」
「モンブランの美味しいお店がこの近くにあるんだ」
「…そっか。父ちゃん、意外と甘いものも好きだったもんね」
「うん。お供えしてあげよう。で、ついでに俺たちもなんか選ぼう?」
雅紀さんは、楽しそうにナビに目をおとしてから、辺りをキョロキョロと見渡した。
雅紀さんの自宅のある区まで戻ってきていたが、来たことのない地域だ。
「このへんにさ、知る人ぞ知るケーキ屋さんがあるんだけど…」
「へぇ…」
「昔、一回だけ昌宏さんと来たんだ…えっと、ここだ」
住宅街の一角にある、スタイリッシュな建物の前で、雅紀さんは、ハザードをたいた。
五台くらいがとめれる駐車場は、運良く一台あいてる。
何気なく目をやり、俺はドキリとした。
見たことのあるシルバーのスポーツカーが止まってる。
…まさかな。
嫌でも、あの気の強そうな青年を思い出す。
俺に会いに来てくれた松本を連れ戻すために、彼を平手打ちした松本のお兄さん。
あのとき、騒ぎを避けるためにいったん帰っていったが、別れ際の冷たいあの瞳が忘れられない。
どうみても友好的ではなかった。
あの日以来、松本に会ってないから、そのあと、松本とお兄さんが、どうなったか知らない。
LINEでは、大丈夫だよ、とメッセージははいっていたけれど…。