第4章 夕虹
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青い空に、線香の煙が一筋たちのぼってゆく。
並んで手をあわせてたけど、雅紀さんは俺よりもっともっと、父ちゃんと話をしてるみたいで、しゃがんだまま動かない。
元気だよ、と報告を終えた俺はそれ以上話すこともなくて、立ち上がって空を見上げてた。
きっと、「おまえは、つれねぇな」と、父ちゃんは苦笑してるに違いない。
…お年頃の息子なんてこんなもんだよ、と、俺は胸のなかで呟く。
雅紀さんから、鼻をすする音がする。
一年に一回だけ。
父ちゃんの命日だけ、雅紀さんは泣いてもいいことにしてるんだって。
泣き顔なんて見られたくないだろうから、俺は空を見上げたまま、動かなかった。
都心から少し離れたこの墓地は、緑が多くて。
夏ももうすぐ終わるのに、蝉の声が賑やかだ。
最期とばかりに命をもやしてる声は、この場所で聞くとなんだか切ない。
ぽかりとういた白い雲に、線香の煙が溶けてゆく。
この煙…父ちゃんに届いてんのかな。
俺はぼんやりとして空を見上げ続けた。
しばらくして、目頭をおさえた雅紀さんが、
「……おまたせ」
といって、立ち上がった。
もう…大丈夫かな?
俺は穏やかな顔をしてる雅紀さんを仰いだ。
「父ちゃん…なんかいってた?」
「ん?…智を頼むなって言ってた」
「ほんと?」
ふふ、と笑ってバケツを持ち上げる。