第4章 夕虹
「じゃあ、どうしたいの」
「…………」
「このまま、2人で夜の街を散歩する?」
「…………」
冗談ぽくいってみたけど、松本は黙ってうつむいてる。
俺は、サイダーのペットボトルを最後まであおって、蓋をしめ、立ち上がった。
「お兄さんと喧嘩でもした?」
「…………」
「帰りたくない?」
「…………」
口を尖らせて目をそらしてる松本が、やけに可愛くみえた。
その顔が、そうだ、と言ってる。
それならば。
「……俺ん家くる?」
こないだも無断外泊したところだし、大丈夫なのかな。とは思うけど。
「泊まりにくる?」
「…………」
「狭いけど……あ、知ってるか」
「…………いいの?」
松本が、子犬のような瞳で俺を見上げた。
不安にゆれる瞳。
手でもてあそぶペットボトルが、パキパキ音をたてる。
「いいよ。でも、LINEかなんかで連絡だけいれておいて。誘拐犯になりたくないから」
「…………うん。わかった」
松本は、一回携帯を立ち上げ、手早く文字を打ち込んで、再び電源を落とした。
まるで、外野の声をシャットダウンするかのように。