第4章 夕虹
「そっか……」
良かった、とちいさくつぶやいた松本の声を俺は聞き逃さなかった。
良かった。
…………どうして?
その意味をたずねようとしたタイミングで、松本のポケットから、着信を告げる音がなる。
松本は、スマホをとりだし、その画面をみて……顔を曇らせた。
そのままなかなか応答しようとしない松本に、俺は、
「……出ないの?」
と、聞く。
松本は、黙って、こくりとうなずく。
プルプルと鳴り続けた音が、あきらめたようにやんだ。
ホッとしたような顔になった松本が、そのままスマホをポケットにしまおうとすると、またプルプル鳴り始めた。
松本は、浮かない顔で、そのまま、サイドのボタンを長押ししたようだった。
鳴り続けた音が唐突に切れる。
「電源切ったの?」
「……うん」
「……いいの?」
「…………いいんだ」
その顔に、俺は言い知れぬ不安を感じて、時計に目を落とした。
10時半。
……もっとしゃべっていたいけど、俺たちみたいな年齢のものがうろうろするには、危険な時間だ。
「遅いし。帰ろうか」
「……やだ」
「やだって……」
俺は思わず笑ってしまう。