第4章 夕虹
「やめてください!」
俺は、松本の腰に手をまわし、引き寄せながら、相手の体を思い切り突き飛ばした。
不意をつかれたようで、そいつがよろめいて離れた。
「……大野さん」
松本が、怯えたような顔で俺を振り返った。
酔っ払いの相手なんかしたことないだろう。
松本は、俺の顔をみて、安心したように眉をさげた。
「逃げるぞ!」
俺は松本の腕を引っ張って怒鳴った。
相手は大人一人だ。
仮に俺らが2人でここで暴れたらなんとかなるかもしれない。
だが、未成年の俺らはここで騒ぎを起こして変に目立ちたくないという思いがあった。
松本が、いつもの威勢がないのも、そのせいだと思った。
ここは逃げるに限る。
松本も、うん、と頷いて走り出した。
「おい、おまえ!絶対いつかヤってやるかんな!」
脅しのような捨て台詞がとんでくる。
お前というのは、松本のことか、俺のことか。
多分……俺だろう。
うるせえ!絶対ヤらせねーしな!
心で叫んで、松本と繁華街を全速力で駆け抜けた。