第4章 夕虹
特別、混むこともなく、穏やかに時間がすぎ、バイトをあがる時間となった。
例のややこしそうな客は、上田さんが、対応したことにより、そそくさと帰っていったらしい。
俺は、そっと松本に声をかけた。
「正面の入り口で待ってて。着替えたらすぐいく」
「うん、わかった」
お疲れさん、と声をかけてくれた三宅さんに、ぺこっと礼をした俺は、バックヤードにとびこみ、着てるシャツを手早く脱ぎ捨てた。
ちょっと、顔がにやけてくる。
だって……戸惑いはしたが……それでも、自分が心を寄せる人物と会えるのは、やはり嬉しいものだ。
しかも、これは、松本から俺に会いに来てくれた流れ。
つまり、俺に会いたくてきてくれたんだ。
そう思うだけで、ひそかに心が弾む。
俺はタイムカードを大急ぎでおすと、裏口から飛び出した。
小さな路地を小走りでかけぬけて、大きな道にでる。
松本を見つけようと、視線をめぐらせて……ぎくりと体が強ばった。
忘れもしない、ついさっき、俺に絡んできた客。
そいつが潤の肩に手を回してる。
潤は、迷惑そうに顔をしかめてその手から逃れようとするが、意外と背の高い客のリーチに阻まれ、うまく体をかわせないでいるみたいだった。
俺は、走り出した。