第4章 夕虹
「……大野さんはバイト何時まで?」
俺と、三宅さんの会話をきいていた松本が、上目遣いで聞いてくる。
「……残業なしなら、10時かな」
「待ってていい?」
今からなら一時間ちょっとある。
だが、松本をきちんと連れて帰らなくてはと思った俺は、うん、と頷いた。
カウンター内の三宅さんに目を向けたら、
「ジンジャーエールしか飲ませないから大丈夫」
俺の心のうちを読んだかのように、三宅さんは親指をたてた。
どうやら、松本は酒に弱いという風に捉えてくれたみたいだ。
俺は、ホッとしながら、三宅さんを改めてカウンターの端に呼び、無遠慮な客のことを伝える。
三宅さんは、少しだけ眉をひそめ、わかった、といった。
「その客のテーブルは上田にふるわ」
バイトのなかでも、強面で、客に負けないナンバーワンの先輩を、三宅さんは名指しする。
上田さんがでていけば、ややこしい客はだいたい黙る。
「……すみません」
俺は、頭を下げて、持ち場に戻った。