第4章 夕虹
カウンターに座ってこちらを振り返っている人物が、唐突に目に入る。
その人物は俺と目が合うなり、大きな瞳を嬉しそうに輝かせた。
白いシャツにベージュのパンツ。
大人っぽい顔立ちと、そのこなれた格好に、大学生にみえるといえばみえる。
「…………松本」
一週間前は、三宅さんの仕業だったけど、今日は……自ら来たのだろうか。
会えるのは嬉しい。
嬉しいけど、会いたい場所はここじゃないよ。
駄目だろ。こんなところに。
補導されたらどうするんだ。
その想いが、俺の顔にでたのだろう。
松本は、一瞬嬉しそうにした表情を、みるみる曇らせた。
「大野さん……」
「いらっしゃい……今日は飲んだら駄目だぞ?」
ちょっとだけからかってやると、松本はホッとしたように表情を緩めた。
きっと、松本はここに来ることの重大さをわかってない。
俺もお前も、こんなとこほんとは来ちゃだめなんだ。
でも、俺は嘘をつくのはなんとも思わない。
だからここで働いてる。
でも、松本は慣れてないはずだろう。
真っ直ぐで正直な男だから。
俺は、三宅さんに笑いかけた。
「今日は残業なしでもいいですか」
深夜の時間帯になるまえに……松本を連れて帰ろう。