第4章 夕虹
薄暗い店内に足を踏み入れると、一週間前に嗅いだ香りと、覚えのある静かなBGMに包まれる。
ざっと店内を見渡すと、何グループかが、テーブル席で談笑していて、カウンターにもまばらに人が座っていた。
この間は早い時間だったから、来店客は俺以外いなかったけど、今日はすでに八時をまわってるわけだから、そこそこの客が入ってる感じだ。
「いらっしゃいませ……お一人様ですか」
俺に気がついた制服姿の青年が、そっと声をかけてきた。
カフェでよく見るような黒いショートのエプロンをした彼は、美しい顔でにこりと笑った。
俺は愛想笑いを浮かべて、「はい」と言った。
すると、青年は「では、こちらへどうぞ」と、慣れた仕草で俺をカウンターに案内する。
ついて歩きながら……ここで、はたと気づいた。
大野さんに会いたくて、ここに来たけど、俺、さすがにもう酒は飲んじゃダメな気がする。
でもここはお酒を飲む場所だよね……?
お茶とか……あるのかな……
少し不安に思いながら、カウンターにぎくしゃくと座ったら、カウンター内の人間が、あれ?と声をあげて近づいてきた。
「松本くんじゃん。また来てくれたの」
「三宅さん……」
知った顔。
俺は、心底安心した。