第4章 夕虹
俺は、驚きのあまり、こっそり噛んでたガムを飲み込みそうになった。
目を白黒させてる俺を、冷たく一瞥した兄貴は、またぐいっとアクセルを踏み、前方の車を追い越した。
「……昨晩、なにしてたんだ。酒盛りか」
「……ううん、違う」
「生意気に合コンか」
「違うよ」
苛立ちを増してゆく兄貴の口調が、どんどん横柄になっていく。
でも、大野さんを悪く言われるのは嫌だ。
俺は必死の思いで、昨日の、事の顛末を語った。
大野さんのバイト先に行っただけのこと。
そしたら、彼を待ってる間にうっかり飲んじゃったこと。
酔っ払った俺を、大野さんが介抱してくれたこと。
無表情にそれを聞いていた兄貴は、眉をひそめ、俺をジロッと見た。
「大野は学生だろ。なのに、酒を扱う場所でバイトしてるってのか」
「……それは……」
「校則違反以前の問題だぞ」
それは俺も知らなくて。
理由を……聞けなかったことだけど。
黙る俺に、兄貴はきっぱりと言いはなった。
「おまえ、もうあいつと会うな」
俺は弾かれるように顔をあげる。
「なんで!」
「んなもん決まってんだろ。お前の友人にふさわしくねぇからだ」
「そんなの……兄貴が決めることじゃないだろ」
「決めることだよ。お前に悪影響を及ぼすやつは、俺が許さない」
「悪影響なんてないよ!」
「現に、未成年のくせに酒かっくらって、ひっくり返ってるじゃねぇかよ」
「それは大野さんのせいじゃない!」
俺は、必死で抵抗した。