第4章 夕虹
「……ったく、何考えてんだ、おまえは」
シートベルトをしてる途中なのに、乱暴に発進する車。
いつも丁寧な運転の兄貴なのに、こういうひとつひとつに苛立ちがあらわれてて……。
「……ごめんなさい」
俺は、しょんぼりしてうつむいた。
車の中は氷点下で、まさに地獄だ。
本気で兄貴を怒らせたときの怖さを知ってるだけに、あとずさりしそうな気持ちになる。
俺が神妙な顔をして黙っているから、兄貴は、はぁ、とため息をついて、ブレーキをふんだ。
「母さんには、おまえから、友達のうちにとまるって俺に連絡があったっていってあるから。口裏あわせろよ」
「……うん」
「……あいつ何者だよ」
「あいつ……って……?」
「大野ってやつ」
「学校の……先輩だけど」
そこで、青信号になり、兄貴はまたぐいっとアクセルを踏み込んだ。
いつもは感じないGに、兄貴の冷たい横顔の相乗効果で、怖くてたまらない。
でも、言葉の端々から、大野さんへの敵意が感じられて、俺は勇気を振り絞ってちょっと話しかけた。
「……大野さんは……悪い人じゃないよ」
すると、兄貴は鼻で笑った。
「未成年のお前に酒をのませるようなやつがか?」
「……っ」
「プンプン匂うぞ、お前」