第4章 夕虹
大野さんは、俺の手からスマホを受けとると、あらたまった声をだした。
「すみません。お電話かわりました。大野といいます……はい、潤くんちょっと……はい」
怒ってる兄貴が、どんな口調で大野さんと話をしてるのか気になる。
キツいこといってなけりゃいいけど……。
ああ……なんだかまた頭がひどく痛くなってきた。
気分も悪い。
俺は、床に座り込んでうなだれる。
「車ですか?……はい。じゃ、住所は……」
そのまま大野さんが自分の住所を言ってるのを、ぼんやりした頭で聞いた。
「お兄さん車で迎えに来るって。おまえさ、ガムかんで酒の匂いごまかしなよ?」
「……うん」
「……どうした?」
「ごめん……兄貴怒ったらキツいから。なんか言われなかった?」
「(笑)なんにも。すみませんって言われたよ。ただ……酒のませたことがばれたらキレられそう」
「……全力で誤魔化す。大野さんガムある?」
うん、と言って、棚をごそごそあさりだした大野さんを見ながら、俺は深いため息をはいた。
兄貴に会いたくないなんて思ったのは、生まれて初めてだった。