第4章 夕虹
「ごちそうさま」
「いえ。お粗末様」
しじみ汁は、実においしかった。
例えインスタントでも、大野さんが作ってくれたというだけで、おいしかった。
浮かれてるせいもあって、ものすごくおいしかった。
だが、唐突に気がついた事実に、俺は今度は一気に気持ち悪くなる。
「松本の兄貴は厳しそうだからさ、酒の臭いがなくなるまでゆっくりして行きな」
のんびりと言った大野さんの言葉に、
「…………兄っ……」
俺は全身の血液が下がった。
そうだ!俺、無断外泊しちまったんだ!!
あわてて辺りを見渡すと、俺の鞄が部屋のすみに置かれてるのをみつける。
昨日、なんだかいけない店に来てしまっているようなうしろめたさから、店にいる間だけ……、と、電源を落としたスマホ。
震える手で、それを取り出し、電源をいれた。
すると、恐ろしい数の着信が残ってるのがわかった。
「やっべ……!」
こんなこと初めてだ。
夜遅くまで遊ぶことはあっても、それは常に兄貴が一緒だった。
親もそれが、わかってるから何も言わなかった。
だけど、今回は兄貴がいない。
しかも、一晩留守にした。
それも連絡なしに、だ。
履歴を確認していくと、着信のほぼすべてが、兄貴。時々家から。
兄貴の着信は一晩中あったようだ。
一気に加速していく心拍数。
狙いすましたようにスマホが震え出す。
画面に浮かび上がった人物の名前は……
俺が、震えながら画面をタップすると同時に、スマホから低い声がした。
「……今どこだ!」