第4章 夕虹
それから、大野さんは少し自分のことを話してくれた。
「今は、その、お下がりをくれた雅紀さんって人に、すごくお世話になってて……」
「……うん」
「最初はその人と住んでたんだけど、俺がしんどくなっちゃって。……で、一人で暮らすことにしたんだ」
「……そうなんだ」
初めて聞く大野さんの過去。
こんなに綺麗に笑う人は、何不自由なく幸せなのだと思っていた俺は……実に能天気だ。
人にはいろんな歴史があって。
事情があって。
理由がある。
きっと、大野さんがお酒を提供するような場所でアルバイトしてるのだって、なにかあるに違いないんだ。
……きっとそうだ。
俺が、神妙な顔をして味噌汁を飲んでるから、大野さんは困ったような顔をした。
「……ごめん。こんな話面白くないよね」
「い、いやいや!そんなことない!」
「まぁ……とにかく俺は一人だから、これから気にしないで遊びにおいでよ」
「…え」
「そのかわり、食い物はなにもないから。何か食いたいなら買ってこいよ」
「う…うん。いいの?」
俺が身を乗り出すと大野さんは、ふふっと笑った。
「いいよ」
俺は、嬉しくて嬉しくて、コクコクと頷いた。
大野さんの懐に入れた気がして、一瞬頭の痛みもどこかにとんでいった。