第4章 夕虹
「パンもあるけど食べる……?」
「いや……いいです。ありがと」
俺は、フローリングにぺたりとあぐらをかいて、お椀に口を寄せた。
ふーふーと息をふきかけながら、しじみ汁を口にする。
……インスタントの味噌汁なんて何年ぶりだろう。
何も欲しくないと思ってたけど、意外とするりと胃に入ってきて驚いた。
温かいものが、優しく胃から全身に染み渡ってゆくようだ。
「おいしい?」
「……うん」
「よかった」
聞いてもいいかな……。
『父ちゃんは二日酔いの時に、この味噌汁を飲む』と大野さんは言った。
その父ちゃんは?
俺は柔らかい表情で俺を見守る大野さんの様子をみながら、そっとたずねた。
「お父さんは……?別々にくらしてるの?」
すると、大野さんは、困ったように首をふった。
「ううん……事故で死んじゃって」
「……お母さんも?」
「母ちゃんは、その前に離婚してでていったから」
「…………ごめん」
……聞いちゃいけないことだった。
俺のバカ。
「やだな……あやまんないでよ。むかーしの事だよ」
大野さんが肩をすくめて、にこりとした。