第4章 夕虹
「あ……りがと。洗濯して返すね」
その笑顔にドギマギして、やっと、それだけ言うと、
「ううん。いいよ、それあげる。俺が履いたらひきずるんだ、裾」
言いながら大野さんは、お椀にお湯をゆっくり注いだ。
「雅紀さん……あ、その知り合いの人ね。大きいからいらないっていうのに、たくさんお下がりくれるんだ。外に着ていけないなら家のなかで着ればいいじゃんって」
「…………」
必要以上にエロくみえるTシャツのサイズの謎が解けた。
そりゃ、大野さんにはでかいよな……。
そんなことを思いながら俺が黙ってると、
「だから、気にしないで。それより、お味噌汁できたよ」
インスタントの味噌汁の入ったお椀を、はい、と大野さんは手渡してきた。
はっきりいって何も欲しくないが、俺は反射的にそれを受け取る。
「しじみ汁。父ちゃんが二日酔いの次の日の朝、よく、飲んでた。これなら飲めるって」
「……二日酔い」
「松本、二日酔いだから。それ」
大野さんは、微笑み、どうぞと言った。
俺は右手にお椀。左手にタオルを持ったまま、ありがと、と呟いた。
気持ち悪い気もするけれど、味噌の匂いにつられて、少し食べれそうな気もした。