第4章 夕虹
……ほんの一年少し前のことなのに、遠い遠い昔のことのように思える。
過去に想いをめぐらしていた俺は、はぁ……とため息をついて足元の砂を見つめた。
智の家を飛び出したあと。
素直に自宅に帰る気になれなくて、俺は駅までの道のりの途中にある小さな公園のベンチにいた。
智には無理矢理、金をもたされ、タクシーで帰れ、と約束させられたけど、この時間に帰ったら逆に親が心配するじゃん……と、自分に言い訳をつくったうえでだ。
足をそっと動かすと、夜の静寂のなか、砂がサク……と、思いのほか大きな音をたて、重苦しいほどに孤独を思い知らされる。
サト……
思い出されるのは、智との再会の頃。
そして、疑問もなく抱き合っていた日々。
事あるごとに智の家に入り浸るようになった俺は、そのたびに二人でくっついて眠っていた。
時に、自然と唇をあわせることもあったが、いやらしいものではなく……すぺて温もりをわけあうだけの、本能的な行為であったように思う。
少なくともそのときは。
ふと、ぐにゃりと自分のスニーカーがゆがんだ。
キン……と、耳鳴りがして……あれ、と思ったら、そのままポタポタ涙がおちてきた。
「……ぅっ……くっ……」
俺は声を押し殺すように、口に腕をあてた。
嗚咽がとまらない。
涙が、次から次へと溢れてくる。
「……ぅ……えっ」
俺は体を折り、小さくなって泣いた。
失恋しちゃったな……と、思いながら、今までの人生で一番泣いた。