第4章 夕虹
俺が首を振ったのをみて、智はちょっと表情を緩めた。
「よかった……ニノがどう思うか分からなくて……なかなか言えなかったんだ」
と、言って智はうつむいた。
俺は、戸惑いながら、智の濡れた髪をじっと見つめる。
言えないって……そりゃまぁ……びっくりしたけど……
だけど、俺は、どちらかというと智の立場が気になる。
「これさ、法律的に……まずいんじゃないの?」
未成年という言葉が胸をよぎる。
智が捕まっちゃうって……俺にしたらそっちの方が重要だ。
智は、ゆっくりとベッドに横になり、うーん……と、声を漏らした。
「たぶん……大丈夫」
「そんな保証どこにあるの。大丈夫じゃなかったら……どーすんの」
「その時はその時だよ。別に俺には、世間体を心配するような家族もないしさ」
思わず、俺は口ごもった。
俺が心配する、って言うのは簡単だけど……。
黙った俺をチラリと見て、智はにこっと笑った。
どうしてお金が必要か。
そんなことは、智には愚問な気がした。
身寄りもなくて、お世話になってる人の援助で、現在の生活が成り立ってる智。
愛があれば、とか、正直に生きさえすればとか、そんなの綺麗事だと、俺くらいの年になればわかる。
結局、何をするにも最終的に必要なのは……お金だからだ。
智は、自由になりたいのだろうか。
学校に行くことさえも、棒にふってもいいと思うくらいに。
「……そうならないように。祈ってるね……」
「うん。ありがと」
俺は智の手をとって、ぎゅっと握った。