• テキストサイズ

Attack 《気象系BL》

第4章 夕虹



伝われ、と願いながら、必死の思いでニノを見つめる。
つかんだ細い腕を離すまい、と、ぐっと力をこめる。

金を受け取って、タクシーで帰ると約束をするまでは、帰らせないつもりだった。

ニノは、唯一、俺の過去を知ってる。
俺がどれだけひどい大人に騙されてきたか知ってる。

だから、俺からの言葉は届いてくれると信じてる。


「…………」

「…………」


しばらく二人で黙っていたけれど。

やがて、涙に潤んだ瞳が、ゆっくり俺を見上げた。


「…………じゃあ、そんな大金もらえないから借りる」

「……おう」

「サトに……笑って会えるようになった時……返すから」

「わかった」

「……返さないかもしんないよ」

「……かまわねぇよ」


ニノは手の甲で涙をふいて、リュックのポケットに無造作に突っ込んである万札を取り出した。
それを半パンのポケットにいれなおし、黙って俺の脇をすり抜け、行儀よく揃えられたスニーカーを履いた。


「……気をつけて」


俺の言葉が届いたか届かないか、わからないけど。

ニノはそのまま俺を一度も振り返らずに、部屋を出ていった。


俺の目の前でパタンとしまった扉。


「…………」


お門違いとは、重々承知してる。
でも、ふにゃふにゃの松本を抱えてなかったら、間違いなく俺も泣いてただろう。

大事な大事な友人を傷つけた。
自分の想いに正直になった結果だけど、ニノを傷つけてしまった。


ごめん……ごめん。ニノ。

/ 725ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp