第4章 夕虹
伝われ、と願いながら、必死の思いでニノを見つめる。
つかんだ細い腕を離すまい、と、ぐっと力をこめる。
金を受け取って、タクシーで帰ると約束をするまでは、帰らせないつもりだった。
ニノは、唯一、俺の過去を知ってる。
俺がどれだけひどい大人に騙されてきたか知ってる。
だから、俺からの言葉は届いてくれると信じてる。
「…………」
「…………」
しばらく二人で黙っていたけれど。
やがて、涙に潤んだ瞳が、ゆっくり俺を見上げた。
「…………じゃあ、そんな大金もらえないから借りる」
「……おう」
「サトに……笑って会えるようになった時……返すから」
「わかった」
「……返さないかもしんないよ」
「……かまわねぇよ」
ニノは手の甲で涙をふいて、リュックのポケットに無造作に突っ込んである万札を取り出した。
それを半パンのポケットにいれなおし、黙って俺の脇をすり抜け、行儀よく揃えられたスニーカーを履いた。
「……気をつけて」
俺の言葉が届いたか届かないか、わからないけど。
ニノはそのまま俺を一度も振り返らずに、部屋を出ていった。
俺の目の前でパタンとしまった扉。
「…………」
お門違いとは、重々承知してる。
でも、ふにゃふにゃの松本を抱えてなかったら、間違いなく俺も泣いてただろう。
大事な大事な友人を傷つけた。
自分の想いに正直になった結果だけど、ニノを傷つけてしまった。
ごめん……ごめん。ニノ。