第4章 夕虹
まさか……と、そっと扉をあけると、ぼんやりと蛍光灯の白がみえて。
入ってすぐあるミニキッチンの向こう側に、よく知る猫背の男の頭が見えた。
かつてのように、ニノが顔をあげぬまま静かに、おかえり、と声をかけてくれる。
大方、ゲームでもしているのだろう。
だけど、俺は、その場に突っ立ったまま動けなかった。
待っていた男だけど。
話をしなきゃと思っていた相手だけど。
どうして……なんでよりによって今日来るんだ。
「……サト?」
「あ……ただいま」
不審そうにかけられた言葉に、ぎくしゃくと返事を返す。
ぐでんぐでんの松本の体を支えながら、それでもその場にいたら、
「遅かったね」
言って……こちらを見たニノの顔が無表情に固まった。
「……いろいろ……あって」
「そうみたいだね。俺、お邪魔だね」
早口で言ったニノが立ち上がり、鞄をひっつかんで出ていこうとするのを、あわてて制した。
「バカ、今から出ていっても最終の電車もうでてるぞ」
「いーよ。歩いて帰る」
「そんな……」
「ケジメつけに来ただけだから。まさかとどめをさされるとは思わなかったけど」
ニノは、泣きそうな顔で俺を見上げた。
胸がズキンとした。