第4章 夕虹
貧血でもおこしてるのだろうか。
うつむかれたまま、
「……すみません」
とだけ、小さく呟かれた言葉に、いや、と返した。
喋るのも辛いだろうと、俺はあえて黙って少し離れたところに立ち、その人を観察した。
同じ制服を着てるから、学校が同じだというのは分かったけれど、学年にこんな人物がいたかどうか覚えていない。
普通は、夏服のシャツのポケット部分に刺繍されてる校章の色で見分けるのだが、抱えたリュックに埋もれるようにうつむいてるせいで、見えなくて。
ただただ、色素の薄い髪の毛だな、とそれだけ思いながら、つり革を握りしめた。
やがて、俺らの学校の最寄りの停留所に到着する。
降りる流れにのる前に、気になって確認すると、座った彼は身じろぎもしない。
寝てるのか。あるいは動けないのか。
……しゃーねーな……
背中ごしに、がやがやと他の生徒たちが降りて行くのをやりすごし、身動きがとれるようになってから、俺は、
「あんた、降りれるか」
と、声をかけた。
ふっと気づいたように体を揺らし、ゆるゆるとあげられた顔を見て……俺は息をのんだ。