第4章 夕虹
やがて、ソースの焼けたいい香りとともに、長野さんが、おまちどぉーっと笑顔で戻ってきた。
「やった!おいしそー」
三宅さんは声を弾ませて箸を手にしてる。
この人、さっきグリルチキン食べたはずだけど……
華奢なくせにやっぱりよく食べるんだな、と思いながら、渡された大皿を前にすると、俺も急に腹が減ってきた。
考えてみたら、昼前から飲まず食わずで、バイト終わったところだもんな。
長野さんの焼きそばは、キャベツやニラの他に、イカやエビも入ってる。
スパイシーなソースの香りが、確かにうまそうだった。
「長野くんの焼きそばって海鮮も入ってるんだよね~」
言いながら、三宅さんは、小皿に取り分けたそれを、ズルズルとすする。
「おい、おまえは、隠れて食べろ。客来たらどーすんだ」
「あーい……」
長野さんに促されて、三宅さんは皿を持ったままカウンターの、向こうに座り込んだ。
俺も、皿に取り分けて口をつけた。
家庭的な味の長野さんの焼きそばは、とても美味しかった。
「はい、飲み物おいとくね」
長野さんが、うすいレモン色の炭酸水をそばにおいてくれる。
「ありがとうございます」
何も考えずに、手に取り、こくこくと飲んで、慌ててグラスから口を離した。
喉の奥が、焼けるようにかっとした。
甘くもなんともない。
「……これ…なんですか?」
俺は、えらいものをイッキ飲みしたんじゃ……、とおそるおそる長野さんに、問うと、
「ハイボールだよ」
焼きそばにあうんだよ、と、にこやかに返された。