第4章 夕虹
「焼きそばは?長野くんの焼きそばオススメだよぉ」
のんびりと言いながら、バーテンダーの格好をした三宅さんが奥から出てきた。
さっきまでの緩い格好から、カチリとした姿になった彼は、印象がまるで違い、なんだかとても大人でカッコよくみえた。
「あ……じゃあ、それで」
ろくろく見もしなかったメニューをとじながら、小さくお願いする。
すると最初からいたそのバーテンダーの人が……長野さんというのだろう……苦笑いしながらシャツの袖のボタンをはずして腕まくりをした。
「お前さぁ……わざわざ、まかないのメニュー言うなよ」
「いーじゃん。俺、長野くんの焼きそば食いたい」
「なんも食べてきてないのか?」
「食ったよ。チキン」
「そんで、まだ食うの??」
「うん」
にっこり笑った三宅さんに、長野さんは、しょうがないなというように笑った。
「まぁ……まだ早い時間だし、誰もいないからいいよ。作ってあげる。そのかわり、客がきたら、健がちゃんとさばけよ」
「あいあーい」
二人の会話を聞くに、どうやら焼きそばは裏メニューだったみたいだ。
俺はあわてて、
「すみません」
と、謝った。
知らなかったとはいえ、面倒なことをお願いすることになったみたいだもん……。
だけど、長野さんは、人の良さそうな笑顔を浮かべて、ううん、と首を振った。
「作るのは好きだから、いいんだ。ちょっとばかり裏にこもるから、待っててね」
そう告げて、長野さんはどこかに消えた。