第4章 夕虹
「昌宏さんが、俺の上司だったって話したことあるでしょう?」
「……うん」
「俺がね、すごい大失敗をした時に、助けてくれたのがキッカケかなぁ」
言って、雅紀さんは、恥ずかしそうに、へへっと笑った。
「失敗……?」
「そう。下手すりゃクビもののエグい失敗。でも、昌宏さんが一晩中、そのフォローの作業につきあってくれて……それで惚れちゃった」
「…………」
寡黙な父ちゃんの初めてきくエピソードだ。
俺んちは父子家庭だったから、学校から帰ってから、父ちゃんの帰りまで俺はずっと一人だった。
だから、いつも極力早く帰ってきてくれていた父ちゃんだけど、年に何回か、仕事が遅くなるから先に休んでてくれ、と、いうことが、確かにあった。
……きっと、これはそのうちのひとつの出来事。
雅紀さんは、溶けかけたアイスクリームをぐるぐるいじりながら、自分で言った言葉に照れてるようにみえる。
いつも大人な雅紀さんが、なんだか可愛くみえた。
「それからは俺の猛アタック(笑)」
「……そうなの?」
「お茶に誘って、食事に誘って……でも、智が待ってるからって、なかなかガードを崩してくれなかったよ」
「……そう」
「でもね、ある日、昌宏さんがすごく体調悪いときがあって。俺、彼を無理矢理寝かせて、かわりにできる仕事全部やった」
「…………」
「そこからかな。心を少し開きはじめてくれたのは」