第4章 夕虹
「……智は……好きな人がいるのかい?」
「………わかんない」
雅紀さんに優しく問われて、俺は力なく首を振り、正直に今の気持ちを言った。
松本への気持ちとニノへの気持ち。
どちらがどうだなんて……
俺は、口をへの字にして、押し黙る。
すると雅紀さんは、
「…………そっか」
と、呟き、静かに窓の外に目を向けた。
つられるように俺もそちらを見た。
窓をしめていても、聞こえてくる蝉時雨。
ほどよくクーラーのきいた快適な部屋の外は、今日も快晴だ。
突き抜けるような青。
雅紀さんはまぶしそうに目をすがめた後、その心の内に、かの人を思い描いたのか、温かな表情をして口を開いた。
「……俺にとってはね、昌宏さんは太陽みたいな人だったよ…」
「…………」
「全部好きだった。優しい声も。手のひらも。俺を思ってくれる言葉も、全部ね」
「……どうやって恋を始めたの」
父ちゃんなんて、俺みたいなコブつきのバツイチだ。
一方、雅紀さんは若くてカッコいいのに……女の人にもモテてただろうに……何故?
「どうやって?……そうだなぁ……」
雅紀さんは、懐かしそうな顔で、頬杖をついた。