第4章 夕虹
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最近好きなんだ、と、雅紀さんが作ってくれたアイスクリームを口に運んだ。
コーヒーをかけたバニラアイスだ。
そのほろ苦い香りと風味が、甘いバニラとマッチして……
「なにこれ、おいしい」
「でしょ?簡単にできるから、つい食いすぎちゃうんだよね」
「アフ……なんだっけ?」
「 アフォガードっていうんだよ」
「むずかしい名前……」
呟いて、またぱくりと口にいれる。
そんな俺をみて柔らかい笑顔を浮かべた雅紀さんもまた、スプーンを口に運んだ。
梅雨が明けた。
暑い夏の幕開けである。
学校は夏休みに入り、同級生はみな入試の天王山とばかりに予備校通いをしてるようだった。
進学を考えてない俺は俺で、バイトの日数を増やし、裏も少し増やし、それなりに忙しい毎日を送っていた。
しかし、俺には気になることがあった。
……ニノのことだ。
あの日から一切俺の家には来なくなった。
LINEを送ったら返事はかえってくるけれど、それだけだ。
俺の帰りを待つために、彼が持ち込んだ小さな扇風機や、彼専用のマグカップは、あの日のまま、一度も使われることなく、俺の部屋にある。
好きだと言われて。
俺は、まだ返事をしていない。
「……何かあったのかい?」
そっと問われて、弾かれたように顔をあげた。
雅紀さんは、優しい目をして、
「そういう顔をしてるよ」
と言った。