第4章 夕虹
Satoshi
三宅さんに出会って、狼狽しまくりの俺は、きっと松本からしたら謎だったことだろう。
嘘であちこちを塗り固めてる俺は、その嘘がひとつでも明るみにでたら、すべてがガラガラと崩れ落ちそうな予感がしてた。
だから、大いに焦った。
松本にはバイトの内容を。
三宅さんには年齢を。
偽ってるそのどちらがばれても、身の破滅だと思った。
どうやったら、この嘘がばれずにすむか。
そればかりを考えてその場を乗りきった。
……そして思い知るのだ。
自分が、周りに胸を張るようなことをしていないのだ、ということに。
「大野さん?……やっぱりボンヤリしてる。疲れた?」
ソフトクリームを食べ終わった松本が、気遣うように、俺の表情をうかがう。
「……そんなことないよ。大丈夫」
だから、俺は、安心させるように笑ってやった。
俺の笑顔をみると、松本も、そう?と笑い返してくれる。
松本が俺と出かけるこの日を楽しみにしていたと言ってくれてる以上、俺の勝手な気持ちで松本をガッカリさせちゃいけないな……。
ついぼんやりしてしまう自分を反省する。
そのとき、ふと、松本の口元に、ソフトクリームのコーンの欠片がついてるのをみつけた。
俺は、自分の口元を指さして、
「ついてる」
と、教えてやる。
え?という顔をして、松本は自分の口元をさぐる。
でも、惜しいところを掠めて、その欠片はなかなかとれない。
焦れた俺が指を伸ばして、「ここだよ」と、それをとってやると、その指が唇に触れる。
「あ……ありがと」
松本は真っ赤な顔になった。
「いや……」
なんだか俺まで照れた。