第4章 夕虹
「そういうもの?」
「そういうものだよ」
穏やかに諭され、それ以上兄貴について言うことができなかった。
しかも、この話題はなんとなく微妙な空気になる、と直感的に感じ、俺は、誤魔化すようにポップコーンを口に入れた。
すると、今度は大野さんが爆弾を投下する。
「ところでさ、松本は、彼女いるの?」
「……っ……いないよ」
「そっかーエスコート上手だし、かっこいいからいるのかと思った」
「そう……?」
のほほんと微笑まれ、複雑な気持ちになる。
俺は……俺の気持ちは。
今どうなってんだろう?
自分でも謎なんだよなぁ……。
いや、これは大野さんにも聞いてみたい。
俺は食いぎみにたずねる。
「そういう大野さんは?」
「……こんな地味な男相手にする女の子いないよ」
ふふっと肩をすくめる大野さんは、ちっとも地味なんかじゃない。
むしろ、その優しい笑顔は、ふわりと雰囲気を和らげてくれるくらいなのに。
でも、大野さん……フリーなんだ。
思わぬ形で、大野さんの恋人事情がわかり、なんか安心してる自分がいた。
……不思議だ。
そのうちに、照明が一段階落ちて、スクリーンに、公開予定の作品の予告編が流れ出す。
「はじまるね」
「そうだね。楽しみ」
俺らは、ひそひそと声をかわし、それぞれの想いを胸にスクリーンに目を向けた。