第4章 夕虹
映画館の中は、それほど混んでいなかった。
俺たちは、あらかじめ選んでいたスクリーン真っ正面の真ん中辺りに座る。
「わぁ、特等席」
周りを見渡しながら、ふふっと嬉しそうに呟く大野さん。
「ほんとだね。はい、どうぞ」
あつあつのポップコーンを差し出すと、大野さんはありがと、と手を伸ばした。
キャラメルがかかった甘いやつ。
大野さん、甘いの好きっていってたもんな。
「なに、これ。美味しい」
ほら。
顔をほころばせる大野さんをみて、俺のチョイスは間違ってなかった、と、ひそかにガッツポーズをした。
まだ薄明るい館内で、映画のBGMを聞きながら、しばらく二人で口を動かす。
しばらくして、大野さんは、感慨深そうに呟いた。
「……映画何年ぶりだろ。すごい久しぶり」
「そうなんだ。最後にみたのっていつ?」
「うんと小さいとき。父ちゃんにねだって、アニメ祭りみたいなの連れてってもらった。それ以来じゃないかなぁ……松本は?」
「俺……は、ちょいちょいくるかな。兄貴とか友達とかと」
「お兄さんか……仲いいね」
大野さんは、ふわりと笑う。
俺は、そういえば家族の話ってしたことないな、と
思って、水を向けた。
「……大野さんは?兄弟っているの?」
「いないよ。一人っ子」
「じゃあ、なんでも自分のものにできていいね。俺なんか、小さい頃は、全部兄貴のお下がりだったよ?遊ぶものも着るものも」
「俺に言わせたら、それはそれでうらやましいよ?」
大野さんが、少しだけ寂しそうな顔になった。