第4章 夕虹
スマホをスピーカーにして、留守電をオンにする。
《……大野さん?松本です》
柔らかな声が流れてくる。
松本は必ず、大野さん?って聞いてくる。
俺の携帯に電話かけてきてんのにね。
彼の声は聞いていて心地いい。
《えっと……いつ映画の仕切り直しをしようかな、と思って電話しました》
ああ……そっか。
俺がすっぽかしたやつ。
松本は何も言わないけど、きっと何時間も待たせた。
連絡もとれなくて、帰るに帰れなくて……悪いことしたなぁ。
《大野さん、アクション以外でも大丈夫?》
いや……それ以外だと……
《だめかな……寝ちゃうかなぁ……?》
うん。多分……。
《邦画なんだけど、ミステリー小説原作で面白そうなのが週末からでさ》
へぇ……
《行かない?》
うん……
《考えといて?また明日電話します》
うん
《じゃあ。また。おやすみなさい》
プツンと切れる。
俺は、もう一度最初から再生する。
松本の声を聞きながら、ベッドに寝転がった。
どうしてこんな俺に近づいてきたのかわからないけど……松本は間違いなく今の俺の心に潜り込んできている男だった。
とても心が安らぐ。
松本の声を目を閉じて聞いた。
優しい……優しい声。
おやすみなさいという言葉に、
「……おやすみ」
ぽつんと呟いた。