第3章 ららら 3
その間、俺が穴があきそうなほど見つめても、微動だにしない集中力で、何やら描いてるから。
俺は、うつらうつらしたり、雑誌を読んだりしながら、おとなしく潤を見守ったんだ。
やがて、窓の外が、夕焼けに赤く染まり始めた頃。
カタン、と筆を置き、
「できた……」
と、嬉しそうに呟いた潤の声に、顔をあげた。
「完成?」
「うん」
「見てもいい?」
「もちろん」
俺は、立ち上がり、潤のそばに近寄る。
何を描いたんだろうか。
あんなに真剣に何時間も……。
アクリル絵の具独特の匂いを心地よく思いながら、キャンバス側にまわると。
「……これは……?」
「えっとね、イメージは智と海」
照れたように説明してくれる、画伯、潤。
深い群青色などの青を基調にした背景に、白や紫のラインがたくさんひかれ、それは波を表現してるのだと教えてくれた。
心のままに描いたらこうなった、という。
「やっぱり……智を思ったら、青になっちゃうんだよね」
で、これ、俺ね、と端っこの紫の部分を指さして、潤は笑った。