第3章 ららら 3
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……もうかれこれ2時間も同じ顔をしてる。
俺は、頬杖をついたまま、そんな彼を目下観察中である。
トレードマークの凛々しい眉毛は、きりっとして。
その下の大きな瞳は真剣そのもの。
きゅっと引き結んだ口は、ときどき思いついたように尖り、瞬きを繰り返しては、ゆっくりと手を動かしてる。
俺は、ソファに寝そべったまま、釣り雑誌をめくるかたわら、年下の可愛い恋人を観察し続けてる。
こちらに背を向けてイーゼルを立ててるせいで、あいつがいったい何を描いてるのかわからない。
だけど、そのおかげで、描いてるあいつの顔がこちらを向くから、表情がよく見えて非常に面白かった。
昼ご飯を食べ終わり、片付けがすんだときだ。
「ちょっと、絵を描いてみたいんだけどさ」
と、潤は唐突に言いだした。
まぁもともと絵を描きたいと、公にもコメントしてたことは、知っていたし、俺と同じ趣味に興味を持ってくれることは、単純に嬉しい。
「いーよ。好きなの使えよ」
「ありがとう」
貸してやった俺の画材を嬉しそうに並べて、真新しいキャンバスに向かって絵筆を動かし始めた彼は、最初こそ、うわ緊張する、だの、すげー、だの呟いていたけれど、次第に集中が深まり、黙ってしまった。