第4章 夕虹
ニノの表情の真意が読み取れず、俺は昨日の自分の状況を正直に言った。
「俺、昨日の風呂くらいから記憶があやふやで……」
「うん。あなたシャワー浴びながらひっくりかえったんだよ」
ガタガタってすごい音がしたからビックリしたよ……、と、そのときのことを、思い出したのか、ニノは軽く肩をすくめた。
「なんか帰ってきたときの感じが、いつもと様子が違うと思ってたけど……客に変なクスリ使われたって?」
「俺、そんなことまで言ってた……?」
「言った。だから、すぐ水をたくさん飲ませて、寝かせたんだ」
ニノは昨日のことをなぞるように、語る。
「で……朝、もう大丈夫?ってきいたら……」
そこで、ニノはちょっと言い淀み、しばらく黙って俺の頬に手をあてた。
「……」
「…………あなたが、俺に抱いてって。言ったんだ。クスリが残ってるから……って」
「…………」
…………嘘だと思った。
震える手。
揺れる瞳。
逸らされる視線。
何をどうみても、嘘をついてる以外ない。
ニノが俺に嘘をついてる。