第2章 ブックマン補佐の彼女①(ラビ)
「宿でなんか美味いもんでも食おーぜ!」
「そうだね、お腹空いちゃった」
ニシシっと笑う、弾けんばかりの笑顔。
この笑顔はブックマンでもエクソシストでもなく、素のラビ自身の笑顔だ。
この笑顔が見れるのは、私だけ。
ブックマン補佐である私だけの特権だ。
だけど、最近のラビの笑顔がわからなくなってきた。
今までは簡単に見分けられた、嘘の笑顔と本当の笑顔。
見分けが難しくなったのは、黒の教団に身を置いてからだ。
「えっとー、牛肉のワイン煮込みと、マッシュポテトと、マルゲリータ。あとシーザーサラダにミネラルウォーターのボトル!」
ラビは宿のレストランに着くなり早速注文をしていく。
私は何を食べようかなあ。疲れたし甘いものが食べたい。
…デザート、先に食べちゃおっと。
「あ、あと」
「あと、このチョコレートパフェを食前に!以上さ」
アオイが注文をする前に、終了させられてしまった。
「あ、他に食べたいもんあった?」
「ラビがパフェ食べるの珍しいね。しかも食前に」
私も食べたかったな と、ポツリと呟く。
「へ?アオイのパフェだろ?いつも疲れたら甘いもん先に食べてんじゃん」
それとも違うモノが良かった?! と、ラビは慌ててウェイトレスを呼ぼうとした。
「う、ううん!パフェ!食べようと思ってた」
「あ、そ?なら良かったさ」
「…ラビはいつも、私が思う事を先にしてくれるよね」
「どんだけ一緒にいると思ってんさ!そんなん朝飯前っ♪」
私の事を、1番理解してくれてる
嬉しい
私達はいつから一緒に居るのだろう。
ラビがブックマン後継者になった時は既に、その隣には私が居た。
昔の記憶を手繰り寄せると、物心つく頃から一緒に居たと思う。
兄妹のように育ったと思うし、そんな風に育てられた。
「お、コレ旨っ!アオイも一口どうっ!?」
はい、あーん! と、味見を催促される。
「あーん」
「どお?」
「ん、美味しっ!」
「だろ?!」
私が美味しいと言えば、何故か得意げに嬉しそうにするラビ。
まるで恋人のようなやり取りも、私達には普通のことだ。
兄妹のような関係だからこそ、できること。
だけど、私はそれに苦しめられている。
嬉しくもあり、悲しい関係。