第1章 星に願いを(ラビ)
「織姫と彦星って、お互いの仕事をサボって神様に怒られて会えなくなるだろ?」
「?うん」
「最初は馬鹿だなって思ったけど、なりふり構わないくらい、お互い惹かれ合ったってことだろ。
…素敵なこと、なのかもな。」
そんなことなかなか出来ねえさ、とラビは空を仰ぐ。
普段の彼の口から、聞き慣れない言葉ばかりで、目を見開く。
「そんで、天の川を引かれて離れ離れにされたんだろ。…やっぱ天の川は見えねえさ。てか!星すら、ない!!(涙)」
「そうだねえ…まだ梅雨は明けないからね。あ、かろうじてお月様は見える、かな?(笑)」
スミレも、ラビと同じように夜空を見上げる。
(ラビに、気を使わせちゃったなあ)
梅雨の時期であるため晴天とは言えず、月が雲で見え隠れしていた。
その暗い雲が、まるで私の本心を覆い隠す様子を表しているようだった。
「…俺さ、スミレから七夕の話聞いた時、“1年に1回しか会えないなんて有り得ねえ”って言ったけど。
ちゃんと仕事してれば、毎年1回でも会えるなんて、幸せさね。
神様に、保証されてるんだろ?
いつもは離れ離れでも、必ず会えること。
羨ましくて、仕方ないさ」
まるで彼の、ブックマンの性について言っているのだろうか。
彼の横顔がとても切なくて、どうしようもなくなってしまった。
スミレは短冊にペンを走らせる。
「……私のお願い事、これにする!!」
「お?どれどれ」
短冊に書かれていたのは、
『ラビと、たくさんお祝いできますように スミレ』
「たくさん、お祝い?」
「うん。誕生日やクリスマスはもちろん、些細な出来事でもいい。…こんな風に、ささやかなお祝いをラビと沢山したい。」
「誕生日やクリスマスって。まるで恋人みたいさね。笑」
「そうだよ。」
ラビは茶化すように笑ってくれた。けど
ブックマンである ラビに言えるのは、
「それくらい、ラビは私にとって大切な人だよ。…なんてったって、命の恩人なんだからね!」
これが意気地なしの、私が伝えられる精一杯だ。