第1章 星に願いを(ラビ)
ラビの横にすとん、と腰をおろす。
「それに、まだ飯食ってないだろ?ジェリーに軽食を作ってもらったさ。」
バケットを覗くと、中には軽食のサンドイッチやカットフルーツ、飲み物等が準備されていた。
「え?!ありがとう!!…わ、こんなにたくさん!」
「俺も記録とかしてたから、一緒に食べようと思って」
ラビと、こんな風に会えるだけで嬉しかったのに。
私のために、こんなに準備してくれたなんて、嬉しすぎる。ラビの優しさに感動してると、
「でも、本当のメインはこっちさ」
ラビはそう言い、スミレに短冊とペンを渡す。
「…これには、スミレ自身の願い事を書いて、笹に飾ろうな!」
「あ、だから小さな笹の葉を持ってきてたのか!」
短冊2枚で十分な飾り付けになるくらい、小さな笹の葉である。
「そうさ♪俺もまだ願い事書いてないから、一緒に飾ろうぜ!んで、せっかくだし願い事見せっこしねえ?」
「ふふ、いいよ!なんて、書こうかなあ。」
もらった短冊が嬉しくて、両手で持ち眺める。
ラビだって忙しいのに、自分のためにこんなに準備してくれたことが本当に嬉しい、幸せだ。
短冊には、何を書こうかなあ。
私の気持ち、は
“ラビとずっと一緒にいられますように”ーーーー
ーーーーーはっ とする。
こんなこと、書けるはず ない。
ラビは、ブックマンだ。
今は記録の為に黒の教団にいるが、記録を終えれば次のログ地へ赴く。
名前まで 変えて。
彼が“ディック”であった時に、身を持って知っている。
ずっと一緒になんて、そんな残酷なこと書けるわけがない。
もし書いたら、彼が困惑を隠して「もちろん!」って、貼り付けた笑顔になってしまうのが、目に見える。
そんなこと、させられない。
「スミレ?」
ラビの声でまたまたハっとする。
思い更けてしまっていた。
ラビの方を向くと、彼はスミレの様子を伺っていたようだ。
「急に黙り込んで、俯いてくから。どうした?」
「…ううん、何でもないよ!何か、書くのが勿体なくて。」
上手く笑えただろうか。暗がりだから、大丈夫なはずだと、自分に言い聞かす。
「…そういや、俺も七夕について調べたんだけどさ!」