第4章 夜桜月見と三日月宗近.. 𓈒𓏸
中々答えない三日月に美桜は驚きを隠せず立て続けに尋ねた。
『な、なんで……どうして三日月が指輪を持ってるの!?
これ、どうやって……』
美桜の声は、少し震えていた。指輪がはめられた指先を握った手もわずかに震えている。
三日月は静かに微笑んだまま、言葉少なに答える。
「加州と乱に少し相談したのだ。主のために、用意した」
『えっ……清光と乱ちゃん……?』
美桜は目をぱちくりさせ、驚きが混じったままだがようやく少し笑顔を見せる。
「うむ。主の“雑誌”なる書物を見つけてな……」
三日月は軽く肩をすくめる。
「主の喜ぶ顔が見たくなってな。主が好みそうな指輪のでざいん、買い方……二振りに手伝ってもらったのだ」
美桜は三日月からは聞き馴染みのない言葉に思わず笑い、指輪を見つめながらも三日月の手にそっと触れた。
『……三日月、ありがとう……!』
「喜んでくれたなら、それでよい」
三日月の声は、柔らかくも確かで、夜風の中に溶けていった。
美桜は頬を赤く染め、指輪がはめられた指先をそっと握りしめたまま、三日月の瞳にある空に浮かぶ月とは違う、三日月が映る瞳を見返す。
桜の花びらが、二人の間を淡く舞い落ちる。
まるで、この夜の記憶をそっと飾るように――。